不思議を科学する

不思議を科学する

人種によって視力の上限に差はあるのか?

アフリカのある民族の視力がとても良いというのをテレビ番組で取り上げていました。人種や民族によって視力が異なるって、本当でしょうか。まず、視力の上限が何によって決まるのかについて見ていきましょう。 東京医療センターの野田徹によると、もしも眼球…

目の色によって色の見え方が異なる?

目の色と言っているのは虹彩(こうさい)の色です。虹彩は瞳孔の大きさを変え、目の中に入ってくる光の量を調節します。この虹彩の色は黒、茶、灰色、緑、青などがあり、人種などによって異なります。虹彩の色を決めるのはメラニン色素の量です。メラニンは…

「目から得られる情報が8割」は本当?

「私たちが得ている外部からの情報のうち、8割は視覚からである」という言葉を私自身も何度か使ったことがあります。同じ意味合いの言葉を多くの人が自明なことのように使っています。でもこれって本当なのでしょうか? 研究論文などでも根拠となる引用文献…

トンボの目は六角形でできている

自然界には六角形でできたものがたくさんあります。カメの甲羅、キリンの縞模様、雪の結晶など。 ハチの巣も六角形の穴が集まったものです。巣を作る働きバチは、それぞれ自分の部屋をできるだけ大きくしようと互いに押し合うことによって六角形になります。…

緑色なのに黒板?

学校で使われている黒板は一般に暗い緑色(ダークグリーン)です。子供の時から黒板と呼ばれていたので特に疑問を持ちませんでしたが、言われてみると不思議な気がします。 黒板がアメリカから日本に持ち込まれたのは、学校制度がスタートした明治初期の1872…

ネコやイヌはなぜ色の識別が十分にできないのか

眼球の奥の網膜には光を感じ取る視細胞とういう細胞がたくさんあります。視細胞は2種類あり、桿体(かんたい)と錐体(すいたい)です。 桿体は弱い光にも反応する感度の高い細胞です。日没後の薄暗い中、月明りや星明りなどの暗い中で物を見るときに働きま…

目と耳の意外な共通点(その2)―波長が短いと冷たく感じ、長いと暖かく感じる―

音は音波と言われるように波で、光もまた波の性質を持っています。 波は山と谷が交互に繰り返られますが、山と次の山までの長さが波長です。光は波長の短い方から青、緑、黄、赤と色が徐々にそして連続的に変化していきます。一方、音は波長が短い(周波数が…

生まれたばかりの赤ちゃんは色が見えない

生まれたばかりの赤ちゃんは色が見えない わたしは生まれてから2歳になるまでの記憶がありません。おそらく3歳くらいのだと思いますが、家の中の風景や両親の話す声をかすかに思い出すことができます。そのころにはすでに目が見え、耳が聞こえていたのでし…

昆虫の複眼を構成する個眼の数と動く速さの関係

昆虫の複眼を構成する個眼の数と動く速さの関係 自然界では、高度な目があればエサとなる動物を容易に見つけて捕らえることができます。また食べられる方の動物も敵をいち早く見つけて逃げることができます。しかし、速く動けない動物が目を発達させてもその…

なぜ紫外線は見えないのか

なぜ紫外線は見えないのか 地上に降り注ぐ太陽光には、人の目に見える可視光以外に、可視光より波長の短い紫外線や波長の長い赤外線などが含まれています。太陽光のおよそ6%は紫外線です。人の目には紫外線は見えませんが、紫外線が見える動物はたくさんい…

ドレスの色の見え方は色恒常性のせい?

ドレスの色の見え方は色恒常性のせい? 昼間の太陽の光で照らされた白い紙は白く見えます。これはいろんな色の光を含んだ太陽光が紙の表面に当たり、当たった光のほとんどすべてが反射して見ている人の目に届くからです。 夕方の黄色い太陽の光で照らされた…

目と耳の意外な共通点(その1) ―歳をとると波長の短いものがわからなくなる―

光は電波と同じ電磁波の一種であり、音は空気の振動です。つまり光も音も波ですが、光の伝わる速度が音に比べ桁違いな速いなど、それらの性質は大きく異なっています。 光の波長は380ナノメートル~780ナノメートル。ナノメートルは1メートルの10億分の1で…

カワセミが魚を捉えるとき光の屈折を補正している

カワセミは全長17センチメートルくらい鳥で、羽根は鮮やかな金属光沢をしたヒスイのような青い色しています。この青い色は色素によるものではなく、構造色と言われ、毛にある微細構造により現われる色です。タマムシの光沢のある緑色も構造色によるもので…

視力の悪いテントウムシが餌である小さな虫を見つけることができるわけ

ヤナギルリハムシは黒い色をした体長約4ミリメートルの昆虫です。幼虫も成虫もヤナギの葉を好んで食べます。 このヤナギルリハムシの幼虫をエサとしているのがカメノコテントウです。カメノコテントウは、日本にいるテントウムシで最大級の大きさで、約1セ…

見えるか見えないかの境界

音には聞こえるかどうかの境界があり、匂いも感じ取ることができるかどうかの境界があります。小さな音は聞こえませんが、十分に大きな音は聞こえます。弱い匂いは感じられませんが、強い匂いは感じ取ることができます。 聞こえないほど小さな音を少しずつ大…

花がいい香りを出すのは虫の目が悪いから

植物がきれいな色の花を咲かせているのは、もちろん人を喜ばすためではありません。蜜を求めて来る昆虫に花を見つけてもらい、受粉の手助けをしてもらうためです。しかし残念なことに昆虫は目が悪く、遠くに咲いている花を見つけることができなません。 昆虫…

虫はなぜ電灯の周りをくるくる回るのか

夜、郊外の電灯の周り虫がくるくる回っているのを見かけます。電灯の下には光源に当たって落ちたと思われる虫がたくさんいます。あまり知られていないことですが、夏の夜に山間部の街灯の下を探すのがカブトムシを手っ取り早く捕る方法の一つです。 動物が光…

地平線近くの月は大きく見える

月と太陽はほぼ同じ大きさに見えます。実際は太陽の方が月より400倍大きいのですが、地球からの距離が、太陽が月に比べて400倍遠いのでほぼ同じ大きさに見えます。これはまったくの偶然と考えられますが、何か不思議な気がします。 では、月や太陽の見かけの…

縦書きより横書きの方が読みやすい?

漢字が中国から伝わったときに縦書きであったので、日本では長い間縦書きが用いられてきました。 欧米の言語やアラビア語などほとんどの外国語は横書きで書かれています。そのような文章は決して縦書きで書かれることはありません。中国でも今ではもっぱら横…

紙に印刷された文字がパソコン画面の文字より読みやすい?

今まで紙で配られていた会議の配付資料の多くが、最近では電子データで送られてきます。それをパソコンの画面で見ながら会議に参加します。手紙やはがきを出したりもらったりすることも以前よりずいぶん少なくなりました。それらに代わり電子メールやライン…

鳥は「鳥目」ではない

鳥目は夜盲症とも呼ばれ、夜になると極端に視力が落ちてほとんど見えなくなる病気です。健康な人でも明るい所から暗い所に移るとしばらくの間見えにくくなりますが、時間がたつと徐々に見えるようになります。これを暗順応と言います。鳥目だと時間がたって…

本を左右に振ると文字が読めないけれど、頭を左右に振ったときは文字が読めるのはなぜ

本を開いてゆっくり左右に振ってみてください。書かれている文字を読むことができるはずです。そして振る速度をだんだんと速めると、ある速さから文字が読めなくなってきます。 今度は本を固定しておいて頭をゆっくり左右に振ってみてください。文字が読めま…

肉眼で血液の細胞が見える

最初に細胞を観察したとされているのは、17世紀のイギリスの科学者であるロバート・フックです。発明されて間もない顕微鏡を使って薄く切ったコルクを観察し、小さな部屋がたくさんあることを見つけて、これを細胞と名付けました。 フックが自ら作り使ってい…

点滅すると時間がゆっくり経過する

入試の監督をすることがありますが、残り時間が10分になると受験生に合図をすることになっています。その合図をしてから終了までの10分間はとても長く感じられます。しかし、まだ解答が終わっていな受験生にとっては、おそらくその10分間がアッという間に過…

視線が会話をスムーズに

人の眼で視力がいいのは視線方向のごく一部です。視線方向から10度離れた場所の視力はおよそ1/10に低下します。すなわち視線から10度離れたところは視力0.1から0.2で見ていることになります。したがって、人は何か作業をしている時、周囲の状況を知るために…

スポーツ選手の引退の原因は動体視力の衰え?

赤ちゃんは成長とともに徐々にいろいろな能力を獲得していきますが、それとは反対に高齢になると歳とともに体力や能力が衰えていきます。私が歳をとったと最初に自覚したものが二つあります。一つが記憶力の低下で、人の名前が出てこなくなったこと。もう一…

生活に役立つ錯視

「これどっちが長く見える」。子供の頃、友達が見せにきた図には、線分の両端に内向きの矢羽を付けたものと外向きの矢羽を付けたものとが描かれていました。明らかに外向きの矢羽を付けたものが長く見えたが、実際は同じ長さ。これが錯視図を見た最初の経験…

鳥の目は「鳥の目」ではない

「鳥の目」とは、高い位置から俯瞰的に全体を見ることを指す言葉です。細かいところにこだわるのではなく、広い視野を持つことの重要性を示唆しています。 しかし、実際の鳥の目は、どうも「鳥の目」ではないようです。 頻繁に発生するバードストライクが社…

虫の目は「虫の目」ではない

「鳥の目」、「虫の目」、「魚の目」に例えて、三つの視点を持つことが、仕事をするうえでも生きていく上でも重要だと言われることがあります。 三つの視点の中でも最もよく使われる「鳥の目」は、鳥が上空から広い範囲を見ていることから、全体を俯瞰的に見…

魚の目は「魚の目」ではない

「魚の目」は「流 れ」を感じ取れることから、時代の変化をとらえて先を読む視点を持つことの例えとして用いられます。しかし、魚の目は流れを感じ取ることができません。流れを捉えているのは目ではなく、体の側面にある側線器官です。この側線器官を特に発…