不思議を科学する

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目の色によって色の見え方が異なる?

 目の色と言っているのは虹彩(こうさい)の色です。虹彩は瞳孔の大きさを変え、目の中に入ってくる光の量を調節します。この虹彩の色は黒、茶、灰色、緑、青などがあり、人種などによって異なります。虹彩の色を決めるのはメラニン色素の量です。メラニンは黒色で、皮膚の表面などにあり、紫外線から皮膚を守る働きがあります。

 そのため、太陽光の強い緯度の低い熱帯地方に住む人はメラニンが多く、皮膚や虹彩の色が黒くなっています。一般に日本人の虹彩にもメラニンが多めで、色は褐色です。メラニン色素が光を吸収し、ほとんど反射しないため褐色に見えるのです。一方、太陽光の弱い北部ヨーロッパなどの地域に住む人にはメラニンが少なく、虹彩の色は青や緑です。

 このような目の色の違いが見え方に何か影響するのでしょうか。

 目の色が青や緑の方がまぶしさを感じやすいことが知られています。また、色の見え方にも違いがあるようです。

 長崎シーボルト大学の庄山らは、光彩の色によって色の見え方にどのような差があるのかを明らかにするために実験を行っています。

実験に参加した被験者は虹彩が茶系の日本人女子学生30人(平均年齢21歳)と虹彩が青-緑系の白人女性23人(平均年齢25歳)です。実験を行った机上面の明るさは30ルクスと500ルクスです。500ルクスは教室やオフィスの明るさぐらいで、30ルクスは薄暗いと感じるくらいの明るさです。わずかな色の差を正しく識別できるかどうか調べるテスト(100ヒューテスト)によって実験が行われました。

 結果は総偏差点という値で示され、間違える(正しき識別できない)と点数が高くなる仕組みになっています。すなわち、点数が低いほど色の識別能力が高いことを表します。30ルクスの明るさでは、茶系は83点、青-緑系は103点で、茶系の点数の方が低いが両者の間には統計的な差はみられませんでした。つまり差があるとは言えないということです。しかし、500ルクスでは統計的な差がみられ、茶系が58点、青―緑系88点で、茶系の方が色の差を識別しやすいことが示されました。

 これは、明るいところでは濃い目の色をしている人の方が、薄い目の色の人より色を見分ける能力が高いということです。ただし、それは微妙な色の差を見分けられるかどうかについてであり、また点数からも分かるようにその差はそれほど大きなものでもありません。日常の生活において、色の見え方に何か影響を及ぼすようなことはおそらくないと思われます。

 

参考文献

庄山茂子、他、虹彩色の異なる2群問における色の見えの差異、日本生理人類学会誌(2007)