不思議を科学する

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目と耳の意外な共通点(その1) ―歳をとると波長の短いものがわからなくなる―

 光は電波と同じ電磁波の一種であり、音は空気の振動です。つまり光も音も波ですが、光の伝わる速度が音に比べ桁違いな速いなど、それらの性質は大きく異なっています。

 光の波長は380ナノメートル~780ナノメートルナノメートルは1メートルの10億分の1です。一方、音の振動数(周波数)は20ヘルツ~20000ヘルツで、波長に直すと17センチメートル~170メートルです。同じ波でも音に比べて光の波長は、極めて短いことが分かります。

 光は水中で速度が低下し、一秒間に約22.5万キロメートルで、空気中の3/4です。ガラスの中ではさらに遅くなり、一秒間に約20.5万キロメートルです。ダイヤモンドでは一秒間に約12.4万キロメートルまで低下し、空気中の半分以下です。

 水中では光の散乱や減衰が大きくなります。澄んだ水の中でも視界は30メートルを超えることはありません。また、深海では太陽の光が届きにくくなり、深さ1000メートルを超えると暗闇の世界です。

 音は逆に水中の方が早く、1秒間に約1500メートルで、空気中の4.4倍にもなります。これは、水は空気に比べ密度が高いため、振動が伝わりやすいことによります。また、水中では空気中より音の減衰は小さく、遠くまで伝えることができます。

 コウモリが夜に超音波を使って障害物や獲物を探知していますが、超音波は空気中では減衰が大きいので、探知できるのは数メートル程度です。同じようにイルカが水中で超音波を使っていますが、水中では減衰しにくいので、探知できる距離は数百メートルにも及びます。光ですと数十メートル先までしか見ることができませんが、超音波を使うとずっと遠くまで見る(?)ことができるのです。特に濁った水の中では有効です。

 光と音にはこの他にも異なるところがたくさんありますが、意外な共通点もあります。

 波長が短いほど高齢者には知覚しにくくなるということです。歳とともに波長の短い青い光に対する目の感度は低下し、青色は暗く感じるようになります。青色で書かれた文字と黒色の文字の識別が難しくなります。音も同じ傾向がり、波長の短い(周波数の高い)音は、モスキート音と言われ、高齢者には聞こえなくなります。私は現在67歳ですが、10,000 Hz以上の周波数の音は聞こえません。8,000 Hzはどうにか聞き取ることができますが、おそらく数年すると聞こえなくなっていることでしょう。

 光と音はよく比較されます。それは、人にとって目と耳が主要な感覚器官であり、光を見て、音を聞くことによって外界からの情報の多くを得ていることと関係しているかもしれません。