不思議を科学する

不思議を科学する

カワセミが魚を捉えるとき光の屈折を補正している

 カワセミは全長17センチメートルくらい鳥で、羽根は鮮やかな金属光沢をしたヒスイのような青い色しています。この青い色は色素によるものではなく、構造色と言われ、毛にある微細構造により現われる色です。タマムシの光沢のある緑色も構造色によるものです。

 カワセミは魚を捕るのがうまい鳥です。川や沼などの上に張り出した木の枝にとまっていて、エサとなる魚を探します。魚を見つけると、水中に飛び込み、一瞬にして捉えます。

 ここで問題になるのが光の屈折です。光の屈折とは、「空気と水」や「空気とガラス」というように異なる物質のなかを光が進むとき、その境界で光が曲がるという性質のことです。例えば空気中から水中に光が進むときは、図のように光が屈折します。

 

         


            図 光の屈折

 

 

           

  図 光の屈折により、実際はAの位置にいる魚がBの位置にいるように見える

 

 魚が水中Aの位置にいるとき、枝にとまっているカワセミから見るとあたかもBの位置に魚がいるように見えます。そのままBに向かって飛び込んでもそこには魚はいないので捕らえることはできません。カワセミは水中の小魚を捕らえるとき、光の屈折を補正して正しい位置を判断し、そちらに向かって飛び込んでいきます。そうすることによって逃げられることなく一瞬のうちに魚を捕らえることができるのです。

 カワセミと逆の立場にあるのがテッポウウオです。テッポウウオは東南アジアなどに棲む魚で、獲物の捕らえ方がとてもユニークです。

 テッポウウオは口から水を噴射し、水辺の草木にとまっている昆虫を水面に落とし補食します。水を噴射するとき、口先が水面に出ていますが、目は水の中です。この場合も光の屈折のために実際とは異なり、テッポウウオからは虫が実際にいる位置より低い位置にいるように見えているはずです。

 しかし、テッポウウオは正確に水を虫に当てて落とすことができます。カワセミとは逆の方向に光の屈折を補正し、実際にいる位置を正しく判断しているのでしょうか。

 噴射した水の飛ぶ方向も光の屈折で実際よりは低い角度で飛んでいくように見えます。水の飛ぶ方向も虫のいる位置も同じように屈折して見えています。したがって虫のいる位置を補正しなくてもいいのかもしれません。経験により、水中から見える水の飛び出す方向を、水中から見た獲物の方向に向けることができるようになれば問題なさそうです。