不思議を科学する

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目と耳の意外な共通点(その2)―波長が短いと冷たく感じ、長いと暖かく感じる―

 音は音波と言われるように波で、光もまた波の性質を持っています。

 波は山と谷が交互に繰り返られますが、山と次の山までの長さが波長です。光は波長の短い方から青、緑、黄、赤と色が徐々にそして連続的に変化していきます。一方、音は波長が短い(周波数が高い)と音程が高く、波長が長い(周波数が低い)と音程が低くなります。

 以前、目と耳の意外な共通点(その1)として、高齢になると、波長の短い青い光や波長の短い(周波数の高い)音に対して感度が低下することを示しました。つまり、歳を取ると青い文字が読みにくくなり、高音が聞こえにくくなるということです。

 人の目と耳の特性について、もう一つ意外な共通点がありますので、今回はその話をしたいと思います。これも波長に関連することで、光や音の波長と人の体感温度との関係についてです。

 中央大学の有光哲彦氏らは、照明の色により体感温度にどのような差が生じるかについて実験を行っています。実験室の天井に設置した照明の色は、白、赤、黄、緑、青の5種類です。その結果、青い光による照明のときとは、赤い光による照明のときより、体感温度が2度近く低くなりました。

 さらに有光氏らは、環境音の周波数により体感温度にどのような差が生じるかについても実験を行っています。実験では、空調の送風音から300ヘルツより周波数の低い音を取り除いた環境音(周波数の高い環境音)と500ヘルツより周波数の高い音を取り除いた環境音(周波数の低い環境音)を比較しています。その結果、環境音の周波数が高いときは、周波数が低いときより、体感温度は約1度低くなりました。

 青い光は波長が短く、赤い光は波長が長くなり、周波数が高い音は波長が短く、低い音は波長が長くなります。二つの実験結果から、光も音も波長が短いときに冷たく(涼しく)感じ、波長が長い時に暑く(暖かく)感じることが分かりました。

 いずれも1度から2度くらいの差で、あまり大したことがないようにも感じられます。しかし、例えば世界中で使われているエアコンの数をと設定温度のことを考えてみてください。この結果は、照明や環境音を工夫することで、消費されるエネルギーを大幅に減らせる可能性があることを示唆しているのです。

 

参考文献

有光哲彦、他、音環境及び色環境の複合刺激が体感温度に及ぼす影響の評価、日本音響学会誌(2015)