不思議を科学する

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夜咲く花は白い

 カラスウリは、朝顔のようにつるで周りの木などに絡みついて大きくなっていく植物です。夏になると、日没後一定の暗さになった時に花を咲かせます。おそらく明るさを精度よく感知するセンサを備えているのでしょう。花が咲いているのは一夜だけで、明け方にはすぼみます。

 カラスウリの白い花に蜜を吸いに来る代表的な昆虫はスズメガがです。花は筒形になっているので、スズメガが蜜を吸うために細長い口を筒の奥に入れようとすると、花粉が頭につく仕組みになっています。スズメガは頭についた花粉を別のカラスウリの花に運び、めしべに受粉させます。受粉に成功したカラスウリが秋につける実はあざやかな朱色です。

 カラスウリと同じように、ヨルガオの花も昼間は咲かず、夜になってから咲きます。ヨルガオの花はアサガオと同じような筒状です。ヨルガオはユウガオとも呼ばれることがあります。紛らわしいのですが、本当のユウガオは別の種類の植物です。アサガオヒルガオ、ヨルガオがヒルガオ科の植物で、ユウガオはウリ科の植物。しかし、ヨルガオもユウガオも夜に白い花を咲かせるところは同じです。

 これらのほかにも夜に花を咲かせる植物として、ゲッカビジンツキミソウなどがあります。夜咲く花の特徴は、白色や黄色などの夜に目立ちやすいように明るい色が多いということです。明るい色の花は、暗いなかで浮き上がるように見えます。そして、香りが強いのも夜咲く花のもう一つの特徴です。暗くて見えにくいので、花粉を運んでくれる昆虫を香りで引き寄せるのです。

 これらの花は昼咲かずになぜ夜咲くのでしょうか。

 これらの花が咲く時期は夏です。夏の昼間は暑くて昆虫の活動が鈍りますが、涼しい夜になると活動する昆虫が増えます。夏の夜に花に集まる昆虫の多くは、スズメガのような蛾の仲間です。

 昼間は活動する昆虫が少ないだけでなく、たくさんの花が咲いているので、受粉を手伝ってくれる昆虫に来てもらえるかどうかわかりません。しかし、夜は花が少ないので昆虫に来てもらえる可能性が増します。

 ライバルの少ない夜の時間帯を選んで花を咲かせるのは、無用な争いを避け、確実に子孫を残すための戦略です。その代わり強い香りを作り出さないといけませんので、負担も増えます。