不思議を科学する

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ビール瓶はなぜ茶色?

 ビールの消費量が減ってきてるとはいえ、酒類の中では根強い人気があります。酒の席では、とりあえずビールで乾杯というのが多いのではないでしょうか。

 ビールの容器には缶と瓶がありますが、缶の比率は徐々に増え、現在70%を超えているそうです。特に家庭で飲むビールは缶入りが多くなってきており、瓶ビールは主に飲食店で飲まれています。

 ガラス瓶は繰り返して使え、リサイクル率も高くなっています。プラスチックは深刻な環境汚染が問題になっていますが、瓶にはそのようなこともありません。また、中身の品質を保ち安全性に優れていることなどから、いろいろなものを入れる容器として長い間使われてきてきました。

 このガラス瓶の色にはさまざまなものがあり、その割合としては、無色が45%、茶色が43%、その他の色が12%です。酒類の瓶としては茶色と緑色がよく使用されています。ビール瓶の色は、オランダのビールのハイネケンなど一部には緑色のものが使われていますが、その他の多くは茶色(褐色)です。瓶を茶色に着色するのには、ガラスの主成分である珪素に鉄などを加えて作られます。

 透明の瓶のほうが、どれくらい飲んだか分かりやすいのでいいような気がしますが、なぜビール瓶は茶色に着色されているのでしょうか。

 ビールの品質を劣化させる要因としては、光、温度、酸素などです。ビールが光にさらされると、ホップ成分が光酸化します。光酸化は、物質が光を吸収によって起こる酸化で、品質の劣化を引き起こします。そうすると、「風味が落ちておいしくない」ということになります。特に劣化を促進させるのが波長の短い紫外線です。

 したがって、ビールの風味を長く保つためには、瓶の中に紫外線や可視光が入ってくるのを防ぐ必要があります。それで瓶に色を付けているのですが、茶色のビンは他の色の瓶に比べ遮光性に優れ、紫外線をほとんど通しません。瓶の色を真っ黒にすれば紫外線以外の光もすべて遮るので最もいいのですが、そうすると中身がどの程度残っているか見えなくなります。茶色にすると可視光もわずかにしか通さないうえ、中身の量も分かるというわけです。

 とは言っても、茶色の瓶は光を100%遮るわけではありません。また、室温が高いと温度による劣化も起きます。瓶ビールは冷暗所で保存するか、早く飲んでしまうのがよいでしょう。

 

参考文献

吉永茂樹、ガラスびん業界のこんな常識あれこれ、NEW GLASS(2017)