不思議を科学する

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魚のお腹が白いのはなぜ

魚のお腹が白いのはなぜ

 

 卵から孵ったウナギの子はレプトセファルスと呼ばれ、平たく、細長く、透明です。

レプトセファルスは半年間太平洋で漂いながら成長してシラスウナギになります。川にたどり着いたシラスウナギは背が黒く腹が白くなり、そこで5~10年間かけて成長して大人のウナギになります。

 イワシやニシンなども、背は黒っぽく(くすんだ青)、腹は白っぽい。背側の黒っぽい色はメラニン色素によるものです。メラニン色素は動物の身体の表面にある色素で、黒や褐色をしています。人の皮膚の髪の色もメラニン色素によるものです。動物にとって有害な紫外線を吸収し身を守る働きがあります。紫外線は水に吸収されるので深いところまで届きません。浅い所に生息する魚にとってある程度、紫外線を防止する効果があると考えられます。

 しかし、魚の色は紫外線防止よりも隠ぺい色としての効果が大きいようです。周囲の環境に似た体色は、存在を隠します。

 鳥の主要なエサとなるのが、水面近くを泳ぐ魚です。水深が深かったり底が黒い土や岩であったりするような場所は、上空から水面を見ると黒っぽく見えるので、背が黒っぽいと海や川の上を飛ぶ鳥から見つかりにくい。また、水中から上を見上げると太陽や空からの光で明るく白っぽく見えます。腹側が白っぽい色をしていると、下にいる敵や獲物から見つかりにくくなります。

 黒(くすんだ青)と白の二色の組み合わせだけでなく、赤や黄などの色をした魚もいます。このような鮮やかな色をしていると、見つかりやすくて生存に不利です。しかし、色とりどりなサンゴ礁では、鮮やかな色彩を身にまとった熱帯魚はかえって目立ちにくくなります。

 光は水に徐々に吸収されてていくので、水深が深くなるにしたがって光が届きにくくなります。特に波長の長い光は水に吸収されやすいので、水面近くを除いて水中を満たしている光は青色です。赤い光がほとんど届かない水深50mあたりに棲むマダイは赤い色をしていますが、赤い光がないので黒く見え、目立ちにくくなります。

 このように目立ちにくく周囲の環境に溶け込む色は、場所によって変わってきます。多くの魚は場所を移動するのですが、カレイやヒラメのように場所に合わせて色を変える魚がいます。また、どのような所でも見つかりにくいのが透明です。レプトセファルスのように弱くて小さな稚魚や動きの遅いクラゲなどに透明なものが多いのは、そのためと考えられます。

 

参考文献

大島範子、魚の体色とその変化:メカニズムと行動学的意義、色材協会誌 (2016)