不思議を科学する

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ハンカチノキは白いハンカチで紫外線よけ

 クリスマスのころになると園芸店の店先に並べられているポインセチア。上部の赤くなっているのは花ではなく、葉が変化したもので苞(ほう)と呼ばれています。形は下部の緑色の葉と同じです。アントシアニンという色素で赤く染まっています。虫や鳥をなど呼び寄せ受粉を手助けしてもらうためで、花びらと同じ役割をしています。黄色い花は小さく、ホウの中心付近にあり、あまり目立ちません。

 ポインセチアと同じように苞が花びらのように見える花を咲かせるのがハンカチノキです。白い苞がハンカチのように見えるのでその名がつきました。ハンカチノキは中国南西部の高原に自生しますが、日本でも公園などに植えられていて見ることができます。

 ハンカチノキの花には花びらはありません。たくさんのおしべと一つのめしべが集まり丸い形をしており、それに2枚の白い苞が上から覆いかぶさるようにしてぶら下がっています。この白い苞はポインセチアと同じように昆虫を引き寄せる働きがあります。さらに、風雨や紫外線から花を守る役割もあります。紫外線はDNA(遺伝情報を担うDNA物質)や細胞に損傷を与える恐れがあります。白い苞にはフラボノイドがあり、この危険な紫外線を吸収するのです。

 フラボノイドには、ポインセチアアントシアニン、ソバのルチン、お茶のカテキン、大豆のイソフラボンなど1万種以上があります。花を目立たせるためや紫外線、乾燥、低温などの環境に適応するためなど役割はさまざまです。アントシアニンは赤、紫、青などの色をしていますが、アントシアニン以外はほとんどが無色です。ハンカチノキの苞が白く見えるのは、組織の中の隙間に空気の泡がたくさんあり、光が乱反射するため。透明な洗剤を泡立てると白く見えるのと同じ原理です。

 人にとって紫外線は、シミ、しわ、白内障、皮膚ガンなどの原因となるとともに肌の老化を引き起こします。普段から日光にさらされている顔や手の肌と服によって日光がさえぎられているおなかなどの肌を比べてみればその違いは明らかです。紫外線よけには帽子が有効で、つばの長めのハット型の帽子をかぶると顔に当たる紫外線の大部分を防ぐことができます。

 ハンカチノキも白いハンカチのような苞で花を覆い、大事なめしべやおしべを危険な紫外線から守っているのです。

 

参考文献

岩科司、花はふしぎ、講談社(2008)

https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/flavonoid/(2024.2.29アクセス)