不思議を科学する

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キリンの舌が黒いのはなぜ

 キリンが棲んでいるのはアフリカのサバンナ地帯です。動物の中で最も背が高く、5メートルを超えるものもいます。このキリンの舌は黒色をしています。一般に哺乳類の舌はピンク色です。それは血管の中の血液の色が透けて見えているためです。

なぜキリンの舌は黒色なのでしょうか。

 キリンの首が長くなったのは、高い木の葉を食べることができるためと言われています。他の草食動物が届かないところの木の葉を独り占めできます。キリンが高い木の葉を食べるとき、首を伸ばし、さらに40~50センチメートルもある長い舌を伸ばし、葉を絡めるようにして巻き取って食べています。

 大きな体を維持するため、1日の半分の時間をかけて食べているので、そのとき長い舌は日光に長時間さらされることになります。サバンナの強い日光には有害な紫外線がたくさん。紫外線は動物や植物のDNA(遺伝情報を担う物質)や細胞に損傷を与える恐れがあります。

 キリンは紫外線を吸収するメラニン色素を作り、この有害な紫外線から舌を守っています。メラニン色素は黒い色をしているので、舌の色が黒くなるのです。

 人でも日光をたくさん浴びているとメラニン色素が作られ皮膚が黒くなります。また、紫外線の強い熱帯地方に住む人の皮膚の色が黒いのもメラニン色素によるものです。

 キリンの体の表面には茶色と白の毛によって作られる4角形から6角形の模様が不規則に並んでいます。その毛をかき分けると黒い地肌が出てきます。これもメラニン色素によって皮膚を守っているのです。

 植物はメラニン色素ではなくアントシアニンやカロテンという色素によって紫外線を防いでいます。花が鮮やかな色をしているのや熟した果実が色づくのはこれらの色素によるものです。若葉が赤い色をした植物がありますが、この色もアントシアニンによるもので、さかんに細胞分裂をしている若葉を紫外線から守っているのです。

 約40億年前に誕生した生命は、紫外線がほとんど届かない海水中で進化をしてきました。水が紫外線を吸収してくれるため、海水中は紫外線による傷害の心配がほとんどありません。約4億年前に植物が、そしてやや遅れて動物が陸上に進出していきました。そこで問題になったのが紫外線対策です。

 陸上の植物も動物も紫外線から体を守るために苦労をしています。キリンの舌や皮膚が黒いのも紫外線対策の一つなのです。