不思議を科学する

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洞窟や深海に棲む動物はなぜ白い色をしているのか

洞窟や深海に棲む動物はなぜ白い色をしているのか

 

 動物が色をまとっている理由はいくつかあります。

 派手な体色や模様で自分の存在を目立たせることにより,敵に対して警告を発するものです。これを標識色といいます。針で刺すハチ、毒をもつヘビ、捕食動物が嫌ういやな匂いを出すカメムシ、食べるとまずいテントウムシなどは、赤や黄色の目立つ色をしています。

 環境の色に似せて溶け込むことによって、目立たなくなり、敵や獲物から見つかりにくくなります。これは隠ぺい色です。葉っぱの色に合わせてキリギリスが緑色していたり、枯草に隠れながら獲物に近づくライオンが黄色い色していたりします。

 色により異性にアピールし、種の維持をはかる動物もいます。キジやオシドリのオスが鮮やかな色をしているのはそのためです。

 身体の表面の色は有害な紫外線から体を守る効果もあります。紫外線の強い地域に住む人種はメラニン色素が多く、肌が黒くなります。紫外線が弱いところに住む人種の肌や髪の色が薄くなるのは、メラニン色素が少なくなるためです。

 光の届かない洞窟に棲む動物の特徴の一つは、色が白いものが多いということです。光の届かないところでは、色をまとっていても見えないし、紫外線もないので、色の効果はなくなります。

 真っ暗な洞窟内に棲む動物の多くは、もともとは洞窟の外に棲んでいた種が洞窟に逃れてきて住み着くようになったものです。動物が洞窟に棲むようになる主な理由は、競争相手や捕食動物が少なく生存に有利なためです。

 洞窟の外に棲んでいた種が洞窟に棲むようになっておこる変化は、まず目を失うことです。目の構造は複雑でそれを維持していくのに大きな負担がかかります。それに見合うようなメリットがなくなれば急激にその器官は退化していくのです。一方、体表の色素を維持していくのは目ほど大きな負担ではありませんが、わざわざ色素を持っている意味はありません。色も徐々に失われていき、白色になるか、または皮膚が透明になり血液が透けて見えるためにピンク色になります。

 同じような理由で光の届かないところですむ動物で白い色をした種がたくさんいます。深海にすむ魚、木の中や土の中に住むシロアリ、土の中に棲むカブトムシやアリの幼虫、巣に中で育つハチの幼虫など。

 光の当たるところでも雪や氷のなかでは白色が逆に目立たなくなります。北極や雪山にすむ動物が白い色をしているのはそのためです。しかし、それ以外の光の当たるところで白い色をしている動物が少ないのは、敵や獲物から見つかりやすく、生存に不利になることによるためと考えられます。

 

参考文献

アンドリュー・パーカー、目の誕生、草思社(2006)