不思議を科学する

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歳をとるとなぜ髪は白くなるのか

歳をとるとなぜ髪は白くなるのか

 

 歳をとるとともに白髪が増えていきます。白髪が目立ち始める歳や白髪の量には個人差が大きく、主に遺伝によると言われています。では若い時には黒かった髪が年を取るとなぜ白くなるのでしょうか。

 その前に、ミー散乱について説明しましょう。小さな粒子に光が当たると、光は散乱します。このとき粒子の大きさが光の波長と同じくらいかまたは大きいときに起こる散乱をミー散乱と呼んでいます。

 白い光がミー散乱をしても散乱した光には色がつかず、白いままです。雲が白く見えるのは、雲を構成する水滴や氷の粒に白い太陽光が当たってミー散乱が起きているためです。

 一方、粒子の大きさが光の波長よりずっと小さいとときに起こる散乱が、レイリー散乱です。レイリー散乱では波長が短いほど、つまり赤い光より青い光が散乱されやすくなります。このため白い光がレイリー散乱を起こすと青くなります。空気の分子に太陽の光が当たるとレイリー散乱が起き、空は青く見えます。

 白髪のはなしに戻りましょう。髪の構造は、海苔巻きと同じような構造をしています。海苔巻きは、外側から海苔、ごはん、具材でできていますが、髪は外側から、キューティクル、コルテックス、メデュラの三層構造です。具が少なくご飯の多い海苔巻きみたいに、髪の毛の大部分を占めるのは2層目のコルテックスです。

 メラニンという黒い色素がこのコルテックスに含まれています。メラニンは紫外線も吸収し、頭を紫外線から守る働きがあります。髪が黒い色をしているのはメラニンが可視光も吸収し、光を反射しにくいためです。

 歳をとると髪の毛のメラニン色素を作る能力が低下していきます。メラニン色素のあった場所には隙間ができ、髪そのものは透明になるのですが、できた隙間で光がミー散乱を起こすために白く見えるのです。シロクマの毛が白いのも同じです。シロクマの毛そのものは透明ですが、中に空洞があり、そこで光が散乱するために白く見ているのです。

 このほかにミー散乱により白く見えるものはたくさんありますが、雪、牛乳、すりガラスなどもそうです。すりガラスの凹凸のある方の面にセロテープを貼ると透明になります。凹凸部分がセロテープのノリで埋まるため、散乱が起きなくなるためです。水に濡れると同じように凹凸がなくなり透明になります。だから、すりガラスの窓が雨で濡れて透明にならないように、凹凸のある面を室内側になるように作られています。