ヤドリギは「宿り木」と書くことからも分かるように、地面には根を張らず、宿を借りるようにほかの樹木の枝や幹に寄生する植物です。寄生される方の植物のことを宿主と言います。ヤドリギの宿主はケヤキやエノキなどの落葉樹で、スギ、ヒノキなどの針葉樹には寄生しません。
夏の間、宿主の葉が茂っているとヤドリギの存在に気づきませんが、冬になりケヤキやエノキが葉を落とすと分かります。宿主の枝や幹にくっ付いている黄緑の葉のかたまりが、目立つようになるからです。ヤドリギの葉のかたまりは鳥の巣のようなもこもことした丸い形をしています。
ヤドリギは二月から三月にかけて花を咲かせ、十一月頃に直径6~9ミリメートルほどの球形で薄黄色をした実を付けます。この実を好んで食べるのがレンジャクです。レンジャクは全長20センチメートルぐらいの鳥で、キレンジャクとヒレンジャクの2種類が冬に渡り鳥として日本各地にやってきます。レンジャクが食べた実の中の種子と種子の表面のねばねばした果肉は消化されずに、糞として別の木に運ばれます。ねばねばした種は木に付着し、そこで新しい芽を出すのです。
芽を出したヤドリギは宿主に寄生根と呼ばれる根を食い込ませ、宿主から養分と水をもらい成長します。しかし、葉が出るまでには3年、実を付けるまでには数年をかけゆっくりと成長します。あまり大きくなることはなく、宿主を枯らすことはほとんどありません。宿主が枯れると自分も生きていけないことを知っているのです。
ヤドリギはすべての養分を宿主に頼っているわけではありません。ヤドリギの葉には葉緑素があり、自分でも光合成をしてデンプンなどの有機物を作っています。このような植物を半寄生植物と言います。人に例えれば、他人の家に強引にいそうろうし、電気や水道をただで使うけど、食料だけは自分で調達してくるというようなことでしょうか。
自ら光合成をすることにより必要な栄養を作り、宿主への負担を減らしています。宿主が大きくなり、長く生きていくことが自分の生存と子孫の繁栄につながるからです。
日本で育つヤドリギにはいくつかの種がありますが、それらは絶滅危惧種や準絶滅危惧種になっています。街中や公園でよく見かけますが、自然のなかではほとんど見られなくなってきています。
他の木の養分や水をかすめ取るずるい存在のような気もしますが、絶滅危惧種や準絶滅危惧種になっていることを考えると生きていくのは大変なのでしょう。楽して繁栄できるほど自然は甘くないということのようです。