不思議を科学する

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炎天下で黒い服はどのくらい暑くなる

 近年、最高気温が35度を超える猛暑日が増えてきました。夏になると、「熱中症に気を付けましょう」と、ニュースなどで盛んに注意喚起がなされています。

 白色に比べて黒色は熱を吸収しやすく、温度が上昇しやすいと言われています。JAF日本自動車連盟)は、白い車と黒い車を夏の炎天下に4時間放置して車内の温度上昇を比較する実験を行っています。最初の車内温度はいずれも25℃、外気温は35℃です。炎天下で窓を閉めた車内平均温度は、白い車が47℃であるのに対して、黒い車では51℃になりました。色の違いにより4℃の差が生じました。ただし、窓を3センチメートル開けていると、5℃低下しました。

 真夏に涼しい格好と言えば、麦わら帽子に白いTシャツ。服の色によって、暑さがどの程度違ってくるのでしょうか。

 国立環境研究所の一ノ瀬俊明氏は、夏の炎天下、色だけが異なるポロシャツ9枚の表面温度の経時変化を比較する実験を行っています。気温30℃程度のとき、5分経過後、白色のシャツの表面温度が気温に近いままでしたが、黒色や深緑色のシャツは50℃を超えてしまいました。その差は実に20℃以上です。温度上昇は、白や黄が低く、緑、濃緑、黒が高くなりました。

 これらの温度上昇は、ポロシャツ表面の反射率の違いによるものと考えられます。光や赤外線などの一部を反射し、残りを吸収します。それが熱に代わって表面温度を上昇させているのです。この結果はポロシャツ表面の温度上昇を調べたもので、内側の温度ではありませんが、表面温度の上昇の違いが体感温度にもある程度影響するだろうと考えられます。

 武蔵野美術大学の北徹朗氏らは、暑熱環境下における,運動やスポーツ実施中の帽子内温度を比較する実験を行っています。それによると、白色の帽子が有効で、白は黒より平均値で3度程度低いという結果になっています。黒色の帽子を 8月の暑熱環境下で使用すると、帽子の内側は40 ~ 45度程度の高温なってしまいました。体温よりも数度高い温度になるので、帽子の中は蒸れていることでしょう。

 スポーツ用品大手のミズノは、色が野球スパイク内部温度に及ぼす影響について調査しています。それによると、最高気温32度の真夏日に屋外で行った測定では、スパイク内部の最高温度は黒で53.3度、白が42.8度となり、10度もの差が生じました。

これら実験結果から、衣服などの色が暑さに大きく影響することが改めて確認できました。夏の熱中症対策として、水分補給とともに、屋外に出るときはできるだけ白や黄の反射率の高いものを身に着けるようにしましょう。

 

参考文献

(1)一ノ瀬俊明、最小スケール気候変動適応策としての被服色彩選択効果について、日本地理学会学術大会(2020)

(2)北徹朗、ほか、帽子の素材・色・形状が暑熱環境下でのスポーツ実施中の生理指標と帽子内温湿度に及ぼす影響、デサントスポーツ科学(2022)

(3)https://jpn.mizuno.com/baseball/products/shirosupa(2023.12.27アクセス)

(4)https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer(2024.1.24アクセス)