不思議を科学する

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黒い岩石が風化して土になるとなぜ茶色になるのか

 地球表面の地殻をつくっている岩石の多くは、地球内部のマグマが地表に噴出したり、地下で冷えて固まったりしてできた火成岩です。火成岩には玄武岩、花こう岩、安山岩があり、玄武岩は黒色で、花こう岩と安山岩は灰色をしています。

 風化は、岩石が風や水などの働きにより砕けて細かくなることです。土は岩石が風化したものや火山灰によってできています。土の色は変化に富んでおり、気候、水はけ、地表からの深さなどによっても変わります。土壌の一番上の層(A層)が黒い色をしているのは、植物などが腐敗分解して生じた「腐植」と呼ばれる有機物を多く含んでいるからです。その下の層(B層)は有機物が少なく、茶色、黄色、赤色、灰色などです。黄色い土は西日本で、赤い土は沖縄県でよく見られます。

 豪雨によって山などの斜面で土砂崩れが起きると、その後に茶色い地面がむき出しになっている様子をときどきテレビのニュースで見かけます。黒色や灰色の岩石が風化してできたB層の土が、なぜ茶色や黄色をしているのでしょうか。

 岩石を作っている元素は、多い順に酸素、ケイ素、アルミニウムで、4番目が鉄です。当然、岩石が風化してできた土もこれらの元素を含んでいます。B層の土の色決めているのは主に鉄の化合物です。鉄には酸化の状態により二価鉄と三価鉄があります。金属が酸素と結びつくことを酸化と言います。金属がさびるのも酸化の一種です。二価鉄がさらに酸化すると三価鉄になります。岩石に含まれている鉄分のほとんどは二価鉄です。二価鉄は黒色なので、岩石は黒っぽく見えます。

 二価鉄が三価鉄になると赤みが増していきます。排水が良い土では鉄が二価鉄から三価鉄に酸化され、いわゆるさびのような状態になるので、色は黄、オレンジ、赤などです。排水が悪い土壌では鉄が還元されて灰色を示します。還元は酸化の反対です。

 鉄によって赤い色を示すものに血液があります。血液の赤色は、赤血球のヘモグロビンに含まれるの鉄が酸素と結びついた色です。これと同じように、岩石が風化し土になる過程で、岩石に含まれている鉄分の酸化が進むと、茶色、赤色、黄色などへと変化するのです。

 

参考文献

今矢明宏、土壌とは何だろう? 分類により土壌を理解する、森林科学(2016)

東照雄、土の色が違う理由:土壌の生成と分類、ペドロジスト(2006 )

谷昌幸、土色は土壌が生成する環境を知る鍵、ニューカントリー(2021)