不思議を科学する

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月の空は昼間でも黒い

月の空は昼間でも黒い

 

 地球が1回自転するのにかかる時間がちょうど一日の24時間だと思っている人もいるかもしれませんが、そうではありません。地球は自転しながら太陽の周りを公転しているので、その分だけ余計に自転しなければ一日にならないのです。1回自転するのにかかる時間が23時間56分、余計に必要となる時間が4分ほどで、合わせて24時間です。

 月の1回の自転には約27日を要しますが、さらに公転で動いた分を加えると、月の一日は29.5日にもなります。月の満ち欠けに必要な日数と同じです。月の一日はとても長いのです。したがって、月面では太陽が何日もかけて昇ってゆき、そしてゆっくりと沈んでゆきます。

 月面から見上げた空(月の空)には雲がかかることはなく、いつも晴れています。しかし、昼間太陽が出ていても空は青くありません。昼間でも空は夜と同じで黒い(暗い)のです。そのため昼間でも星を見ることができます。月の空がいつも暗いのはなぜでしょうか。

 晴れた日、地球の空が青いのはレイリー散乱によるものです。光が物に当たってその光がバラバラになることを散乱と言います。散乱の仕方には種類があり、レイリー散乱はその一種で、空気の分子(酸素や窒素など)のように非常に小さな粒に光が当たることによって起きます。

 池に石を投げ入れると波ができますが、波の山から次の山までの長さを波長と言います。光も波であり、波長の短い方から青、緑、黄で、一番波長が長いのが赤い光です。レイリー散乱では波長が短いほど、つまり赤い光より青い光が散乱されやすくなります。このため白い光がレイリー散乱を起こすと散乱された光により青く見えます。空気の分子に太陽の光が当たるとレイリー散乱が起き、空は青くなるのです。

 月には大気がないため太陽の光は散乱されず、空は暗いのです。

 地球では、昼間の太陽は白い色をしていますが、夕方になり日が傾くと徐々に黄色味を増し、日没時には赤くなります。太陽だけでなく空も赤く染まります。しかし、月面から見る太陽は、日の出から日没まで白で色を変えることはありません。空が赤くなることもありません。

 地球では高度が高くなるのしたがって、空気は薄くなっていきます。世界最高峰のエベレストの頂上付近では空気の密度は地上に比べ約40%です。空気が薄くなると光が空気の粒に当たりにくくなります。それでヒマラヤなどの高山の上空では、レイリー散乱が少なくなりことにより、青い光は減り、空の色は濃く(黒に近く)なります。