不思議を科学する

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ハチの駆除は白い服を着て

ハチの駆除は白い服を着て

 

 アシナガバチは蓮の実の形をした小規模な巣を軒下や木の枝に作ります。子供のころ巣をとって遊んでいました。アシナガバチは比較的おとなしい性格です。ミツバチには何度か刺されましたが、アシナガバチに刺された記憶はありません。ただ、友達が目の近くを刺され赤くはれていたのを覚えています。農作物などにつく害虫を食べるので益虫とされています。

 一方、スズメバチの丸い巣は大規模で、中には数十センチメートルもある巣を作るものもいます。毒はアシナガバチより強く、刺されると死に至ることがあるほどです。統計によると、日本での死者は年間20~30人のもなります。

振動などのよって巣を刺激すると、スズメバチは巣を守るために攻撃してきます。特に激しく攻撃してくる対象は動くものや黒い(濃い色の)ものです。頭や眼など黒い部分を真先に攻撃してきます。

 ハチの巣の幼虫や蛹は他の大型動物にとっては栄養豊富なエサです。クマやキツネなどの哺乳類、ハチクマやカラスなどの鳥類がスズメバチの天敵です。スズメバチの巣を襲うクマが黒い色をしているために、黒い色をしたものに向かってくるのだと言われることがあります。

 三重大学教授の松浦誠博士は、オオスズメバチの攻撃の色による影響について調べています。実験では巣の入り口から5m離れた場所で、縦、横ともに20cmの方形をした黒、黄、白のそれぞれの布を同時に振った場合、最初の3分間で飛来したハチの数を数えました。それによると、黒布へ飛来し攻撃した働きバチは36頭に達しましたが,黄と白ではそれぞれ3頭にとどまったという結果で、黒色に対する攻撃性が強いということが確認されました。

 中国南部,台湾,インドネシア,タイなど大型スズメバチ属が豊富な地域では,幼虫や蛹を食用として採取しています。日本でも一部の地域で食べる習慣があります。スズメバチの最大の天敵は人かもしれません。松浦誠博士は、黒への攻撃はスズメバチの天敵として重要な地位を占めるアジア民族とも深い関わりがあるのではないかと、述べています。つまり髪の色が黒いので、黒いものを目印にして攻撃してくると言う考えです。

 専門業者がスズメバチの巣の駆除をするときは、白い防護服で頭から足まで全身を覆っています。また、スズメバチが出そうなところに行くときは、白や黄色の明るい服を着て、黒い髪を隠すため白い帽子をかぶるのがよいでしょう。

 

参考文献

牧野俊一、森の危険な生物たち スズメバチ類、森林科学(2006)

松浦誠、社会性カリバチの外敵に対する防衛行動に関する生態学、衛生動物 (1998)