不思議を科学する

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脇汗をかくと黒っぽく見えるのはなぜ

 汗などで着ている衣服が湿るとその部分の色が濃く見えます。夏の暑い日のテレビのロケ番組で、明るい色のシャツを着ていた女性出演者の脇の下が汗で暗く見えていました。脇汗をかいていることをほかの男性の出演者から指摘され、恥ずかしそうにしていました。

 気温が高い日や運動した後など、体温が上がります。汗をかくことにより上がった体温を下げる効果があります。わきの下などは特に汗をかきやすい場所です。

 汗などで衣服が湿るとその部分の色が濃く見えるのはなぜでしょう。

 明るい色をしている物に光が当たると、当たった光の大部分がその物の表面で反射し、見ている人の目に届きます。そうすると人の目には明るい色として見えます。逆に黒などの暗い色をしている物に光が当たると、当たった光の大部分がその物の表面で吸収されほとんど反射してきません。そうすると暗い色として見えます。

 乾いているときは布の表面には繊維の細かい凹凸があります。凹凸で光は乱反射します。乱反射とは物の表面に当たった光が特定の方向に反射せずに四方八方に反射することを言います。赤いシャツなら赤い光がたくさん反射してきて赤色に、青いシャツなら青い光がたくさん反射してきて青色に見えます。

 ところが汗で濡れると布の表面に平らな水の膜ができます。光が当たると、水の層に光が入射し、その中で反射や屈折を繰り返します。再び空気中に戻ってくる光は少なくなります。つまり反射してくる光が減ります。これにより、色が暗くなります。

 透明なガラスの片側に小さな凹凸を付けると白い不透明な「すりガラス」になります。小さな凹凸で光が乱反射するためです。すりガラスの凹凸のある面に水をかけると、表面に平らな膜ができて光が透過するようになり、透明になります。これは汗をかいて湿った服の表面と同じです。

 運動場の乾いた土は白っぽく見えます。土の表面に小さな凹凸があり、そこで光が乱反射されているのです。見ている人の目にたくさんの反射光が届き、明るい色に見えます。運動場に水をまいたり、雨に濡れたりすると土の表面に水の膜ができ、乱反射してくる光が少なくなるので黒く見えます。濡れた土は強い太陽にしばらくの間照らされれば、表面が乾きます。そうすればまた乱反射する光が増え、元のように白っぽく見えるようになります。

 脇汗が目立ちにくい服の色は、黒や紺などの暗い色です。濡れる前から反射光が少ないので、濡れて反射光が減ってもその差は小さく、濡れることによる色の変化が分かりにくいのです。ただし、暗い色の服は熱を吸収しやすいので体温が上がり、ますます汗をかくかもしれません。