不思議を科学する

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赤い若葉があるのはなぜ

 色の見え方としては、物体の表面に属しているように見える物体色と発光しているように見える光源色があります。若葉色は、JIS(日本工業規格)に規定されている物体色の慣用色名のひとつで、やわらかい黄緑と定義されています。慣用色名は、動物や植物など私たちの身の回りにある様々なものに結び付けた慣用的な呼び方で表された色のことです。

 若葉色に近い色に萌黄(もえぎ)があり、同じく若葉の色です。春になり木々の芽が成長し、若葉となります。黄緑色の若葉はすがすがしい気分にさせてくれます。

若葉が黄緑色をしているのは、光合成を行う緑色のクロロフィル葉緑素)がまだ少ないことによります。葉が本来持っているカロチノイドの黄色い色と少ないクロロフィルの緑色が混ざって黄緑色に見えるのです。

 若葉が成長し、クロロフィルが増え、さかんに光合成をするようになると緑色を強めていきます。また、秋になり黄葉するのは、クロロフィルが壊れてカロチノイドの色があらわれてくるからです。

 このように若葉色は淡い黄緑色をさしますが、すべての若葉が黄緑色をしているわけではありません。一部の植物の若葉には赤色をしているものがあります。たとえば、アカメガシワベニカナメモチです。特にベニカナメモチは、枝先の葉が赤く染まり木全体が紅葉しているかのように見えます。他の木々が紅葉する秋には、この木の葉は緑色をしており、そのまま冬を越す常緑樹です。若葉の赤色が美しくしいことから、生垣として多く利用されています。

 これらの若葉の赤くなるのはアントシアニンという色素によるものです。アントシアニンは赤ワイン、ブルーベリーなどにも多く含まれ、人の体に害を及ぼす活性酸素から身を守る抗酸化機能抗酸化作用があります。

 アカメガシワなどの若葉になぜアントシアニンが蓄積されているのか、まだ十分には解明されていないようです。いくつか理由が考えられていますが、アントシアニンにより有害な紫外線から若葉を守るためだとする説が有力です。若葉は細胞分裂をしており紫外線がつくる活性酸素は遺伝子に傷つける恐れがあります。アントシアニンはこの活性酸素を消す働きがあります。また、アントシアニンには抗菌作用や虫の幼虫を寄せつけない作用もあるそうです。若葉のうちは紫外線や害虫に弱いので、成長して強くなるまでアントシアニンで保護しているのでしょう。

 

参考文献:納谷昌之、梅干しとひかり(2022)