不思議を科学する

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透明な動物は水中にはいるのに陸上にいないわけ

透明な動物は水中にはいるのに陸上にいないわけ

 

 体の色を環境の色に合わせることで、目立たなくなり、捕食者や獲物に気づかれにくくなります。隠ぺい色です。環境の色が変わると目立つようになるので、なるべく体の色に近い環境を好んで棲んでいます。なかには、カメレオンやタコなどのように移動した環境に合わせて色を変えるものもいます。

 環境の色が変わっても色を変える必要のないのが、体を透明にすることです。

 水中には体が透明で見つけにくい動物がたくさんいます。例えばイワシの稚魚であるシラスやクラゲなどです。透明にすることにより、目立たなくなり敵から見つかりにくくなります。陸上では体の一部が透明な動物はいますが、体全体が透明な動物はいません。なぜ陸上に棲む動物は体を透明にしないのでしょうか。

 動物の体の主な成分は水です。水の屈折率は1.3で、空気は1.0です。屈折率が異なるとその表面で反射が起きます。透明でも表面で反射が起きると体の輪郭が分かります。屈折率約1.5のガラスは透明ですが、空気中でガラスのコップは形も分かるしその存在を見失うこともありません。

 体を水と同じ屈折率の透明な物質でつくると、水中では体の表面で反射が起きず形が分かりにくくなります。シラスやクラゲの体の屈折率は水とほぼ同じでなので、水中ではまさに透明で存在に気づきにくくなります。しかし、クラゲを水から出すと形がはっきりわかるのは、体とその周囲の空気の間に屈折率の差が生じるためです。

 水分を多く含む動物の体を空気と同じ屈折率1.0で作ることはできません。陸上では完全な透明な体を持つ動物がいないのはそのためです。

 陸上で透明な動物がいない理由としてもう一つ考えられます。それは陸上では有害な活性酸素を発生さる紫外線が強いことです。陸上で透明な体ですと紫外線が体の内部まで届くので生存に不利です。水中、特に水深が深くなると紫外線はほとんど水に吸収されてなくなるので、その問題は生じません。

 また、血液に酸素を運ぶヘモグロビンが含まれていると、赤い色になり、透明にできません。クラゲは血管の代わりに水管というものを持っています。心臓がなく、体をふわふわと動かすことによって、水管の中の体液を循環させています。

 しかし、水中の透明な動物も目まで透明にすることはできません。目は光を吸収してものを見ているので、その部分は光を透過することができないためです。シラスも体の大部分が透明ですけど、目だけは黒く見えています。