不思議を科学する

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なぜカラスは黒いのか

なぜカラスは黒いのか

 

 カラス科の鳥はカラス、カケス、カササギオナガなど約120種が、極地を除く世界中に生息しています。日本国内でよく見かけるカラスは、ハシブトガラスハシボソガラスです。名前のとおり、嘴(くちばし)が太いのがハシブトガラスで、細いのがハシボソガラスです。

 カラスを近くで見ると大きな黒いくちばしが不気味です。カラスはくちばしや足も含め、体全体が真っ黒です。黒い身体をしているとどのようなメリットがあるのでしょうか。

 カラスの黒は主にメラニン色素によるものです。メラニンは太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収します。紫外線が強い熱帯地方に住む人の皮膚にはメラニンが多く含まれ、黒い肌をしているのも、紫外線から体を守るためです。また、メラニンにはバクテリアに対して抵抗力を増す働きがあると言われています。このように体を守る働きに加え、メラニンは羽根の強度を高める効果があります。

 次に見え方の観点から考えてみましょう。

 闇夜のカラスといわれるように、黒は夜目立ちません。しかし、カラスは昼間活動するので夜に目立たないことは、あまり意味がありません。

 昼間でも、森の中や藪の中では黒は目立ちにくくなります。大型の鳥であるカラスには、天敵は比較的少なく、ワシやタカなどの猛禽類やキツネなどです。天敵が少ないとはいえ、目立ちにくいことは敵から発見されにくく、生存率を高める効果があります。

 カラスがゴミをあさるところをよく見かけるように、なんでも食べる雑食性です。自然界では、カエル、トカゲ、スズメなどの小動物、昆虫、死肉、木の実、穀物などを食べます。この中で小動物をとらえるときには目立たないことが有利に働くと思われます。

 一方、開けた場所にいるときや飛んでいるときは、黒は赤や黄ほどではありませんが、比較的目立つ色です。森林総合研究所の川上和人氏は、カラスは開けた場所で群れを作る習性があり、黒い色は仲間を見つけやすいことと関係しているのではないかと述べています(参考文献(2))。

 そのほかに黒は熱を吸収しやすく、濡れた羽根が乾きやすいメリットもあります。

決定打がなく、はっきりしたことはわかりませんが、このようなことが総合的に働き、生存上有利になったために、カラスは黒色になったのではないかと考えられます。

 

参考文献

(1)伊澤栄一、カラスの社会、動物心理学研究(2011)

(2)岩波書店編集部、科学者の目、科学の芽、岩波書店(2016)