不思議を科学する

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光を使ってだますホタル

 発光する生物と言ってまず思いつくのがホタルです。普段それ以外で発光する生物を見かけることはほとんどありません。しかし、地球上に光を発する生物は数万種もいると言われています。特に深海に住む動物の多くが自ら光を出す発光動物なのです。

 チョウチンアンコウは200メートルより深い深海の底に棲む発光動物です。メスの方がオスより大きく、大きなものでは約60センチメートルになるものもいます。オスのチョウチンアンコウはメスに比べて非常に小さく、成長しても数センチメートルの大きさです。

 チョウチンアンコウのメスは、頭の部分に竿のようなものが突き出ていています。この竿のようなものは背びれが変化したものだと言われています。その竿の先端にはエスカと呼ばれる疑似餌が付いています。このエスカを暗い深海の中で光らせて獲物をおびき寄せ、近くに来た小魚などを大きな口を開けて食べます。エスカが提灯を灯しているように見えることから名前がついたと言われています。オスは発光する疑似餌を持っていません。

 同じように光で獲物をおびき寄せて食べる動物がいます。北米に住むフォツリス・ベルシコロルというホタルのメスです。

 飛びながら発光するのはオスのホタルで、メスは地上で発光します。光を発することにより、お互いに相手を探しているのです。

 フォツリス・ベルシコロルのメスは他の種のホタルのオスより大きな体をしています。ほかの種のホタルのオスが光りながら飛んでいると、その種のメスの光方に合わせて地上の草の上で光り、オスをおびき寄せます。メスと交尾ができると思って近づいてきたところを捕まえて食べてしまうのです。他の種のホタルのオスにとっては恐ろしい存在です。

 ホタルは種類によって光方が異なります。例えば日本で最も明るく光るゲンジボタルの光り方は、「ボーッ」と長く光ります。一方、ヘイケボタルは「チカッ」と短く光ります。また、同じゲンジボタルでも西日本と東日本では光の点滅の周期が違います。西日本の方が早く約2秒に1回光りますが、東日本のゲンジボタルが光るのは約4秒間に1回です。インドネシアなどにいるプテロプティックス・テナーという小型のホタルは1秒間数回と速く点滅します。

 フォツリス・ベルシコロルのメスのすごいところは、何種類かのホタルと同じ光方で光ることができるところです。そのため他の種のオスはまんまとだまされて餌食になるのです。

 

参考文献

内山裕之、親子で楽しむ生き物のなぞ、講談社(2004)