不思議を科学する

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三毛猫はほとんどがメス

 動物の中にはオスとメスで体の色が異なるものがいます。

 そのような動物では、一般にオスが鮮やかな色をしています。例えば、キジやオシドリのメスは茶と白で地味な色です。それに対して、キジのオスは頭部の赤色が印象的ですし、オシドリのオスの体はオレンジや青で彩られています。このようなオスの鮮やかな色は、繁殖のときにメスにアピールするためと言われています。しかし、鮮やかな色は天敵から見つかりやすく、生存に不利です。そのためオスも繁殖期が過ぎると羽が生え変わりメスと同じような地味な色になります。

 ネコはペットとして最も好まれている動物の一つで、世界中で飼われています。そんなネコにもオスとメスで色が異なるものがいます。ネコの基本となる毛の色は、白、黒、茶の三色です。1色だけのものや、2色が混ざったもの、3色が混ざったものまでさまざまです。白、黒、茶の三色そろったネコを三毛猫と呼んでいます。三毛猫は日本原産のネコとして親しまれてきました。日本ではごくありふれたネコですが、海外では珍しく、人気が高いようです。

 ところで三毛猫のほとんどがメスです。なぜオスの三毛猫はいないのでしょうか。

 ネコの毛の色はメラニン色素によるものです。メラニンは紫外線から細胞を守ってくれる色素です。ヒトの肌や毛髪にもメラニン色素が含まれており、メラニンが多いと、皮膚や髪は黒くなります。黒い瞳メラニン色素によるもので、メラニン色素が少ないと瞳は青やグレイになります。

 ネコの場合、黒い毛は黒メラニン、茶色い毛は黄色メラニンにより発色します。三毛猫の毛の色を決める遺伝子は性染色体にあります。ヒトの細胞の中には、46本の染色体がありますが、そのうちの2本が性別を決定する性染色体です。ネコの染色体は38本ですが、人と同じように2本の性染色体があり、オスがXYでメスがXXです。黒と茶を作り出す遺伝子はそれぞれX染色体にあり、X染色体が2本ないと三毛になりません。つまり三毛猫になるためにはメスでなければならないのです。

 したがって、キジやオシドリとは違って、ネコのオスの色が鮮やかで、メスが地味というわけではありません。遺伝上の別の理由で色が異なっているのです。ただし、三毛猫のオスが全然いないわけではなく、非常にまれですがいます。染色体異常によって生まれることがあるそうです。

 

参考文献

秋山豊子、他、動物の体色が分かる本、グラフィックス社(2022)