不思議を科学する

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紙に印刷された文字がパソコン画面の文字より読みやすい?

 今まで紙で配られていた会議の配付資料の多くが、最近では電子データで送られてきます。それをパソコンの画面で見ながら会議に参加します。手紙やはがきを出したりもらったりすることも以前よりずいぶん少なくなりました。それらに代わり電子メールやラインなどのやりとりを画面のうえで行うだけです。

 パソコン画面に表示された文字は大きさを変えることも可能ですし、画面の明るさも変更できます。また検索機能もなどの各種の機能を使うことができます。さらに紙の消費を減らすこともでき、地球環境のうえでも優れています。このように電子データは紙に印刷された文章より優れている点がたくさんあります。

 しかし、実際に文章を読むとなると、パソコンの画面より紙に印刷されている文章の方が不思議と読みやすく感じます。特に、内容が難しいものをじっくり読みたいときなどは、わざわざ印刷をして読みます。なぜ、印刷した文章の方が読みやすいのでしょうか。

 東海大学の面谷博士らは、ディスプレイに表示された文章と印刷された文章の読みやすさなどを比較した実験を行っています。それによると、文章を読み取る作業では、作業効率についてはディスプレイと紙とでは大きさ差がないことが示されています。しかし、被験者は、疲労と読みやすさでは紙が優れていと評価しています。また、文章の誤りを探す作業では、紙の方が誤りを見つけやすいという結果になっています。

 ディスプレイの方が、視線が画面に固定される傾向が強く、これが疲労を高める原因の一つであることを明らかにしています。一方、電子書籍で読む場合、固定するときより手で持って読むときの方が、疲労しにくくなり、見やすさの評価が高たかくなることを示しています。

 これらのことより、紙の方が最もいい位置に置くことができ、位置の変更も手軽にできることが読みやすく、疲れにくいということにつながっていると考えられます。

 今後、機器の性能向上や表示の仕方の工夫により、ディスプレイの文章の読みやすさは改善されていくでしょう。しかし、ディスプレイの表示に慣れている若い世代とは違って、私のような紙の文章に慣れた者にとっては、紙の本に捨てがたい良さをいつまでも感じるのではないかと思います。

 

参考文献

面谷信、他、電子ペーパーのめざす読みやすさに関する研究 -紙とディスプレイの読み取り作業比較実験からわかってきたこと-、日本画像学会誌(2005)