不思議を科学する

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赤く青く光る星はあるけれど緑色に光る星はなぜないのか

 地球から観測できる星には2種類あり、太陽の光を反射して光っている星と、自ら光をはなっている星です。

 太陽の光を反射して光っている星は、太陽の周りを回っている惑星や彗星、それから惑星の周りを回っている衛星です。これらの星の色は、表面の物質によってその色が決まってきます。例えば火星の表面には酸化した鉄が含まれるので、白い太陽の光のうち赤い光を多く反射し、赤みがかった色に見えます。

 自ら光をはなっている星は恒星と呼ばれ、地球から観測できる星の多くは恒星です。恒星の内部では核融合反応が起こっています。核融合反応とは、水素どうしがくっついてヘリウムとういう物質ができることですが、同時に作り出されるのが大量の熱です。

 発生する熱で恒星の表面は高温になります。高温の物質の表面からは、熱放射という原理により光、赤外線、紫外線などが放射されます。鉄を熱すると光り出しますが、これも熱放射によるものです。熱せられた鉄の色は、温度が低いときは赤色、温度が高くなると黄色くなります。さらに熱すと鉄は溶けてしまいますが、白く輝きます。

 鉄と同じように、恒星から放射される光の色はその表面温度により変わっています。表面温度が低いと放射される光は主に波長の長い赤い光です。温度が上がると黄色い光が加わり、星の色はオレンジ色になります。さらに温度が上がると中間くらいの長さの波長の緑色の光も増えていき、星の色は黄色になります。赤、黄、緑が混ざると光の色は黄色です。

 太陽の表面温度は約6000℃ですが、このぐらいまで温度が上がると波長の短い青い光が加わり、光の色は白くなります。太陽の光には緑の光が最も多く含まれていますが、赤や青の光も多く含まれており、それらの光が混ざることにより、光の色は白くなるのです。

 おおいぬ座シリウスは、太陽の次に明るく見える恒星です。その表面温度は約10000℃ですが、青い光の割合が多く、星の色は青白くなります。

 このように表面温度により星の色は、赤、オレンジ、黄、白、青と変わっていきます。緑の光が最も多く放射す星は、同時に必ず赤や青の光も放射しているので、それらの色が混ざり白く見えます。LEDはある特定の色の光だけを出すことができます。それで緑を発するLEDがあるのです。しかし熱放射では、赤や青の光をほとんど放出することなく、緑の光だけをたくさん放出することができないのです。そのため緑色に見える星は存在しません。

 

参考文献

左巻健男監修、光と色の100不思議、東京書籍(2001)