不思議を科学する

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鳥は「鳥目」ではない

 鳥目は夜盲症とも呼ばれ、夜になると極端に視力が落ちてほとんど見えなくなる病気です。健康な人でも明るい所から暗い所に移るとしばらくの間見えにくくなりますが、時間がたつと徐々に見えるようになります。これを暗順応と言います。鳥目だと時間がたっても見えるようになりません。

 鳥が夜に目が見えなくなることから鳥目という名前がついたと言われています。しかし、フクロウのように夜行性の鳥がいますが、他の鳥は夜になると目が見えなくなるのでしょうか。

 鳥の目はよく発達しています。特にタカなどの猛禽類は視力が高く、上空から地上にいるネズミなどの小型の獲物を見つけ襲うことができます。また色覚も発達していています。人の目の水晶体は紫外線を透過しないため紫外線を見ることができません。しかし多くの鳥の目の水晶体は紫外線を透過し、紫外線が見えます。さらにウなどのように魚を捕らえる鳥は、水中でもよく見える水陸両用の目を持っています。

 目の網膜の中には、光を生理的な電気信号に変える視細胞がたくさんあります。電気信号に変換され、処理された情報が目から脳に届くことによって光が見えます。この視細胞には、桿体と錐体の2種類があります。桿体は暗い所で感度が高く、錐体は明るい所で働く視細胞です。

 これらの視細胞には、光を吸収して化学変化を起こす視物質が含まれていて、それが引き金となって生理的な電気信号を作っているのです。暗い所で感度の高い桿体の視物質をロドプシンといいます。このロドプシンを作るにはビタミンAが必要です。暗い所で物が見えづらくなる夜盲症という病気の原因のひとつには、ビタミンAの欠乏があります。

 人間の片目には明るい所で感度が高い錐体が約700万個、暗い所で感度の高い桿体が約1億3000万個もあります。つまり、全視細胞のうち約95%が暗い所で働く桿体ということです。哺乳類には桿体が多いという特徴があるのですが、これは恐竜が栄えていた時代は哺乳類が夜行性だったため、暗い中でもよく見えるように感度の高い視細胞を多くもつようになったと考えられています。

 昼間に活動する鳥類を見てみると、桿体より錐体を多くもっているのがほとんどです。しかし、桿体がないわけではないので、夜でもある程度見えていて夜でも飛ぶことができます。つまり鳥は「鳥目」ではないのです。ハクチョウなどの大きな鳥は昼間わたりをしますが、小さな鳥は天敵である猛禽類に襲われないように夜に渡りをします。