不思議を科学する

不思議を科学する

ヒマワリは太陽の方を向く、向かない?

 ヒマワリは黄色い大きな花が特徴的です。夏の季語になっていますが、まさに夏を代表するような花です。

 ヒマワリは外側に大きな花びらがあるので一つの花のように見えますが、大きな花びらの内側にはたくさん並んだ小さな筒状の花(筒状花)(とうじょうか)があり、それが集まったものです。ヒマワリはキク科ですが、キク科の植物に筒状花を持つものがよく見受けられます。筒状花は外側から咲始め、徐々に内側の花が咲くようになります。

 一つのヒマワリに筒状花が多いものでは3000輪あります。一つの筒状花から種が1個できるので、ひとつのヒマワリから種が3000個も採れることになります。この種は栄養価が高く直接食用にもされていますが、おもに油を採るために広く栽培されています。

 ヒマワリは漢字で向日葵と書きます。これは花が太陽の方を向くことを意味します。気象観測を行う日本の衛星の名前も「ひまわり」です。地球の自転と同じ速さで地球の周りを回っています。地球の人から見ると止まっているように見えます。地球を1日に一回りし、いつも地球を見ているということから「ひまわり」と名付けられたようです。

 しかし、植物のヒマワリは、太陽を追って花が回ることはないとも言われています。実際はどうなのでしょうか。

 筑波大学の長谷川剛氏は、ヒマワリの花が太陽の方を向くのかどうかを確かめるために、暗室でヒマワリに光を照射してどちらを向くかを調べました。

 用意したのはつぼみのない若い苗、つぼみのある苗、花の咲いている苗の3種類です。最初に東から光を4時間照射、次に上から4時間、最後に西から4時間照射しました。その結果、つぼみの有無にかかわらず若い苗は光の方を向きましたが、花の咲いている苗はほとんど動きませんでした。

 花が咲く前のつぼみの頃までは苗は太陽の方を向きますが、つぼみが色づき始めると動かなくなるというのが実際のようです。ヒマワリは花が咲くと動かなくなりますが、花の多くは東を向いて止まっています。ただし、全ての花が東を向くわけではなく、東を向かない花もあります。

 実際は太陽の方を向かないのに向くと言われ、漢字も向日葵と書くようになったのが不思議です。太陽のような黄色く大きな花を咲かせるので、太陽の方を向いているように見えたのかもしれません。

 

参考文献

長谷川宏司、他、博士教えてください 植物の不思議、大学教育出版(2009)