不思議を科学する

不思議を科学する

ニワトリが米を食べれば卵の黄身は白くなる

 卵ほどいろいろな料理に使われている食材は、ほかにはないのではないでしょうか。日本人は世界的にみても卵の消費量はトップレベルで、平均してひとりが一日に1個弱食べています。日本料理に卵は合うのかもしれません。さらに料理だけでなく、ケーキやクッキーなどのお菓子にも使われています。安価でおいしく、栄養価も高い卵は人気の食べ物です。

 そんな卵ですが、殻の色には白色と赤色があります。白い羽のニワトリが白い殻の卵を、赤い羽のニワトリが赤い殻の卵を産みます。赤い卵のほうが、栄養がありおいしそうに感じますが、エサが同じであった場合、味や栄養にはあまり差がないようです。

殻だけでなく、黄身の色もよく見比べてみると、卵によって微妙な差があることが分かります。鮮やかな黄色のほか、色が濃くやや赤みを帯びたもの、淡い黄色のものなどです。

 黄身の色はニワトリがエサから吸収した色素によって変わります。極端な例ですと、黒い色素が含まれるエサを与えると黄身は黒くなってしまいます。一般には、ニワトリのエサとしてはおもにトウモロコシを与えることが多いのですが、これに含まれるカロテノイド色素が黄身を黄色くしているのです。カロテノイドは多くの野菜や果物に含まれる黄色や赤色の色素成分で、人の体内で生じる活性酸素から体を守る抗酸化作用があり、動脈硬化やがんを防ぐ効果があると考えられています。

 欧米ではトウモロコシの代わりにおもに麦をエサとして与えています。そのため欧米で食べられている卵の黄身の色はうすく、淡い黄色です。

 それではエサとしてトウモロコシの代わりに玄米を与えるとどうなるでしょうか。黄身は白くなります。ゆで卵を作ると白身と黄身の色の差がほとんどなくなるほどです。この卵を使えば、白い卵焼きを作ることもできます

 ひとは赤色や黄色の食品をおいしそうだと感じ、黒や青色をまずそうだと感じる傾向があります。卵も黄身の黄色が鮮やかなほどおいしそうに感じる人が多いようです。それで黄身の色の濃い卵が人気なのです。

 トウモロコシのエサにカロテノイド色素を含むパプリカの実やマリーゴールドの花弁を原料とした天然色素を混ぜて与えています。そうすると黄身の色が濃く鮮やかになります。ただし、色と味とはあまり関係がないそうです。

 

 参考文献 中嶋隆、他、天然卵黄着色強化剤の産卵ニワトリの卵黄色に与える影響、日本家禽会誌(1994)