不思議を科学する

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昼の月が白いのはなぜ

 日本では古くからお月見の習慣があり、桜と並んで月は短歌や俳句に読まれてきました。日没と同時に東の地平線から上って来る満月は、太陽光よりは少し黄色味がかっていて、ほどよい明るさが落ち着いた印象を与えます。それが日本人に好まれてきた理由なのでしょうか。

 太陽は、真昼天頂に近いときは白い色をしていますが、夕方高度が低くなると黄色くなり、日没直前では赤色になります。太陽と同じように月の色も高度により変わります。高度が低いときは黄色、高度が高くなるにしたがって白みを増していきます。

 月は太陽の光を反射して光っていますが、太陽よりも黄色く見えます。これは月の表面の砂などが、波長の短い青い光を反射しにくく、波長の長い黄色い光や赤い光を反射しやすいためです。惑星も月と同じように太陽の光を反射して光っているため、惑星の表面の物質によってその色が決まってきます。例えば火星の表面には酸化した鉄が含まれるので赤い光を多く反射し、赤みがかった色に見えます。

 一方、晴れた昼間にでている月は白く見えます。黄色いはずの月がなぜ昼間は白く見えるのでしょうか。それには「青い空の色」と「補色」が関係しています。

 太陽光が空気の分子などの微粒子に当たると散乱します。これをレイリー散乱と呼びます。レイリー散乱には、波長の長い赤や黄の光より波長の短い青い光の方が散乱しやすいという特性があります。この青い光をたくさん含んだ散乱光が地上に届くので、地上にいる人には空が青く見えます。

 二つの色の光をある割合で混ぜると白くなる場合、その二つの色の関係を補色と呼んでいます。例えば赤の補色は青緑です。

 青と黄も補色の関係にあるので、黄色い月の光に青い空の散乱光が重ね合わさると白くなります。そのために、青空に浮かぶ昼間の月が白く見えるのです。したがって、日が落ち、太陽による散乱光がなくなると月の色は本来の黄色にもどります。

 また、月の表面の一部は黒い玄武岩などで構成されていて、反射率は低く、平均で約7%です。この反射率が月の明るさを決めています。一方、地球の反射率は30%くらいです。もし、月に水があり、月の一部が雲で覆われていると反射率は地球と同じように高くなり、今より約4倍明るく、そして白みを増した月になります。こんなに月が明るく、白くなるとお月見の月としてはどうでしょうか。

図1 昼間の月

 

参考文献

桜井邦朋、自然の中の光と色、中公新書(1991)