不思議を科学する

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北極星を見れば緯度が分かる

 北半球では、夜、北の空を見ると、星々が時間とともに反時計回りに動いて見えます。その回転の中心にあるのは北極星です。したがって北極星はいつ見ても真北の方向で輝いています。北極星は2等星と比較的明るいこともあって、北斗七星などを手がかりに容易に見つけることができます。夜間に方角を見定めるのに、昔から利用されてきました。

 ただ、見る場所によって北極星の高度は異なります。ここで言う高度とは水平線となす角度のことです。詳しい説明は省きますが、北極星の高度はその観測地点の緯度と等しくなります。たとえば、緯度が北緯36度の東京では、北極星は地平線から36度の高さの位置に見えます。

 北極点の緯度は北緯90°で、地球上に1点しかありません。北極点では北極星は90度の高度、すなわち真上(天頂方向)に見えます。

 GPSが無かった時代に北極点に行こうと思ったとき、その点をどうやって探したのでしょうか。北極点は氷の張った海です。ポールを立てておいても、そこは氷とともに動いてしまいます。GPSが普及する前に、北極星の高度など天体観測をすることによって北極点に到達したことを確認していました。

 なお、正確には、北極星は星の回転の中心点にはありません。星の回転の中心点を天の北極と呼びますが、北極星は天の北極から1°近くずれているのです。したがって北極星も小さな半径で円運動をしているように見えます。その円運動の中心が天頂に来ている地点が本当の北極点になります。

 昔は北極星などの星を頼りに航海をしていました。北極星を見つけることができれば、船が進んでいる方角と船がいる緯度が正確に分かるからです。星の分布から考えると、天の北極近くに北極星のような明るい星があるは偶然です。もし、天の北極付近に明るい星がなければ昔の航海はもっと苦労をしていたかもしれません。

 なお南半球では南の空を見ると、星々は北半球とは逆に時計回りに動きます。回転の中心点は天の南極と呼ばれますが、「はちぶんぎ座」という暗い星座の中にあります。天の南極の近くには明るい星がないので、星を見ただけでは南の方角がはっきりしません。もちろん北半球ではこの星座を見ることはできません。