不思議を科学する

不思議を科学する

青色光は本当に防犯や自殺防止に有効か

 青色光は人の気持ちを静めるために犯罪や自殺の防止に効果があると言われています。世界で最初に街路灯に青色光が設置されたのがイギリスのグラスゴーです。それは街の景観の改善を目的として、街路灯の色をオレンジから青に変えたのです。

 この青色光の街路灯に当初想定していなかった効果がありました。青色の光の下では静脈が見えにくくなることから、麻薬常習犯が減少したのです。2005年、このことを犯罪が減少したと日本のテレビなどで報じられました。この報道をきっかけに、日本でも最初の青色防犯灯が奈良市で導入されました。その結果、犯罪件数は青色の防犯灯導入区域で大幅に減少しました。

 しかし、その大幅な減少は積極的な防犯活動の効果が大きく、複合的な対策(青色光と防犯活動)が取られていないところでは、犯罪件数の増減は半々でした。効果がはっきりしないまま、全国的に住宅街や駐輪場での青色光の導入が広がっています。 

 青色の街路灯は、安心感に対して高い評価がでています。しかし、明るさが白色の1/3程度で日本防犯協会が推奨している明るさを満たしていないこともあり、通りの明るさや色の分かりやすさの評価は不十分であるとされています。また、同じ明るさなら、白色光と青色光では見え方に大きな差はないという結果になっています。これまでの評価結果などからでは、青色光の落ち着いた印象が犯罪減少につながるとは考えにくいところがあります。

 2007年に石川県野々市駅周辺に設置された青色防犯灯について住民にアンケート調査が行われています。それによると「青すぎて寂しい感じがする」と答えた男女が30%以上いました。また、40%以上の女性が「薄暗くて怖い感じがする」と答えています。青色防犯灯の設置により、住民の防犯意識が高まったという意見がある反面、このようにマイナスの効果も示されています。

 防犯灯と同じような理由で、駅のホームや踏切などに青色照明が設置されるようになり、その数も年々増加しています。ある鉄道会社の統計から、駅ホームにおける青色灯の設置後に鉄道自殺者数が平均して約84%少なくなったとするデータがあります。しかし、他の鉄道会社に対するアンケート結果における評価は分かれており、その効果についてはっきりとした結論はでていません。自殺防止効果の科学的な根拠は十分ではなく、その効果についてはまだまだ検証されていないというのが実情のようです。

 

参考文献

照明学会、青色照明光の心理的・生理的効果に関する研究調査委員会報告書(2012)

*下記著書より抜粋

入倉隆、脳にきく色 身体にきく色、日経プレミアシリーズ(2016)