不思議を科学する

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光合成で葉は強すぎる太陽の光を使いきれていない

 植物は二酸化炭素と水を材料にし、太陽の光エネルギーを利用してデンプンや糖などの有機物を作っています。これを光合成と呼んでいます。大気中の二酸化炭素は葉の表面にある気孔から吸収し、水は根から吸収します。

 晴れた昼間、緑の葉は太陽の光を浴びて盛んに光合成を行っています。太陽の高度が高くなって、光が強くなればなるほどたくさん光合成をしているように感じます。

しかし実際、葉が光合成で使える光の量は、太陽の光の強さの3分の1で上限に達します。どうして3分の1で上限に達するかというと、光合成に必要な二酸化炭素が不足するからです。

 光の強さが増すにしたがって、植物の葉による光合成の量(スピード)は増します。晴れた日の昼頃の太陽の光の強さは約10万ルクスです。光合成の速度は植物によって異なります。速い速度で光合成を行う植物でも、約3万ルクスで上限に達し、光合成の速度はそれ以上増しません。つまり、およそ3分の2の光は使いきれていないのです。

 光合成には二酸化炭素が必要で、葉の表面にある気孔から吸収します。しかし、構造上気孔からはたくさんの量の二酸化炭素を吸収することができないのです。吸収できる二酸化炭素の量に限界があるので、光が強くなっても、光合成のスピードが上がらなくなるのです。

 もっとも晴れて照度が10万ルクスになる日ばかりではありません。曇りの日は1万ルクス、雨の日は千ルクス程度です。また日の出後しばらくの間や日没前は太陽高度が低く、照度も低くなります。さらに時間によっては他の植物や山などの陰になり太陽が十分に当たらないこともあります。こんなことなども考えると、3万ルクスで上限に達するのが最も効率的なのかもしれません。

 植物工場は、室内で植物を栽培する工場です。おもにレタスやカイワレ大根などの成長の早い、葉物野菜が栽培されています。常時光を照射し、24時間光合成を行っています。そのため植物工場内では二酸化酸素が不足しがちです。そこで二酸化酸素を供給することにより、光合成のスピードが落ちないようにしています。さらに通常より二酸化酸素の濃度を高くし、光合成を促進させることも行われています。

 植物工場では湿度についても注意を払っています。空気が乾燥してくると、気孔から水分がたくさん発散します。そうすると植物は水分が不足してくるので、それを防ぐために気孔を閉じます。気孔を閉じると光合成に必要な二酸化炭素を吸収できなくなります。そのため植物工場では、気孔が閉じないように湿度を高く保つようにしています。

 会社は、景気がよくなるとたくさん製品を作り、利益を上げようとします。しかし、調達できる材料以上には製品を作ることはできません。光合成においても、よく晴れて光が強くなったからといっても、材料となる二酸化炭素が不足すると十分に有機物を作ることができないのです。

 

参考文献

田中修、他、知って納得!植物栽培のふしぎ、日刊工業新聞社(2017)