不思議を科学する

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半月の明るさは満月の半分ではない

 満月は深夜になると南の空高くに上ります。そのとき月に照らされる地表の明るさはおよそ0.2ルクスです。人の視力は明るい所では1.0付近で、細かいものまでよく見えます。暗くなるにしたがって見えにくくなり、満月の明るさである0.2ルクスになると視力も0.2~0.3まで低下します。細かいものまでは見えませんが、歩いたりするのには困りません。

 半月によって照らされる明るさはどのくらいでしょうか。半月の明るさは満月の半分ではありません。丸い電球を黒い布で半分隠すと明るさは半分になります。しかし上弦の月下弦の月のように半分欠けて半月になると、明るさはぐっと暗くなり、約10分の1の明るさになります。三日月にいたっては100分の1以下の明るさしかありません。10分の1の明るさになると照度は約0.02ルクスで、視力もおよそ0.1まで低下します。

 ところでどうして月の明るさは大きさに比例しないのでしょうか。それは月の表面が小さな砂粒で覆われていることと関係しています。

 月の砂粒はパウダー状の小さなものですが、正面から当たった光は正面方向にたくさん光を反射します。これが満月の場合です。しかし横から光が当たったときは砂粒の影ができ正面方向にはあまり光を反射しません。これが半月の場合です。このため半月は満月に比べてずっと暗くなるのです。

 月の見かけの大きさはいつも同じではありません。14%程度大きさが変化します。それは地球から月までの距離が変化するからです。月が地球を回る公転軌道は完全な円形ではなく、楕円形です。そのため地球から月までの距離は、一番近いときは35万7千キロメートルですが、最も遠いとき40万6千キロメートルになります。一方、太陽の見かけの大きさは月ほど変化しません。それは太陽の周りを回っている地球の公転軌道が円形に近いためです。

 月の見かけの大きさの変化は、太陽が月に隠れてかけて見える日食の時にその影響がはっきりと分かります。月が太陽にちょうど重なった時に、月が太陽より大きいと太陽が完全に隠され、皆既日食となります。逆に太陽が月より大きい時は、細い光の輪が見える金環日食になります。

 月が最も大きく見えるときと最も小さく見えるときでは、見かけの面積は約30%違います。したがって最も大きく見えるとき光も3割強くなるので、この時、月が最も明るく見えます。この月をスーパームーンと呼んでいます。

 それから月はほんのわずかですが、徐々に暗くなっています。月が地球から毎年3~4センチメートルずつ遠ざかっているためです。それで徐々に小さく見えるようになり、暗くなるのです。40数億年前、月が出きたばかりの頃の月と地球の距離は、今の約15分の1しかありませんでした。したがって約15倍の大きさ(面積では約200倍)で見えることになります。仮に今の月の大きさをビー玉とすると、できたばかりの月はバスケットボールの大きさ位になります。その頃の月はとてつもなく大きく明るかったのです。