不思議を科学する

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時計の針が右回りなのはなぜ

 時計には針で時刻を示すアナログ式と数字で時刻を示すデジタル式があります。一時デジタル式がもてはやされたことがありますが、見やすいこともあり今ではアナログ式が好まれているようです。最近の時計の誤差はほとんどなく、特に電波時計では自動で時刻合わせをするのでいつも正確です。

 子供の頃には家に1台しか時計がありませんでした。振り子式の掛け時計です。昔の振り子時計は、5分や10分はすぐくるっていました。当時は、それをあまり気にしないのんびりしたところがありました。

 人が作った最初の時計は日時計でした。晴れた日に地面に棒を立てると、棒の影ができます。影は時間とともに動いていくので、影の位置からおよその時刻を知ることができます。これが日時計の原理です。季節によって15分以上の誤差が生じます。最古の日時計は6000年前にエジプトで作られたと言われていますが、原理がとてもシンプルなのでもっと昔からあったかもしれません。

 太陽は東から出て南側を回って西に沈みます。日時計の棒の影は太陽とは反対に西から北側をとおり東へと進みます。つまり日時計の棒の影は右回りです。現在、時計の針が右回りなのは、日時計に合わせたからです。

 しかし、日時計の影が右回りになるのは北半球でのはなしです。図に示すように、南半球では太陽は東から出て北側を回って西に沈みます。したがって、日時計の棒の影は西から南側をとおり東へと進みます。つまり日時計の棒の影は左回りになります。

 日時計は太陽が出ていない曇りや雨の日、そして夜には役に立ちません。その後、いつでも使える時計として水時計や砂時計が作られました。水時計は小さな穴の開いた容器に水を入れ、徐々に減っていく水の量から経過時間を知る仕組みです。

 針のある機械式の時計が最初に作られたのは、1300年ころのヨーロッパのようです。紐につながった錘が下がっていく力で時計が動きました。針は1本だけ、長針も秒針もありません。誤差も50秒に1秒と大きくかったのですが、16世紀に振り子式の時計が発明されると、誤差は5分に1秒と格段に小さくなりました。

 ヨーロッパは北半球にあるので日時計は右回りでした。それに合わせて機械式時計の針も右回りになりました。もし機械式時計が南半球の国で発明されていたら、時計の針は左回りになっていたかもしれません。

 

図 南半球の日時計は反時計回り

 

参考文献

セイコーミュージアム、時計の歴史https://museum.seiko.co.jp/knowledge/type/mechanical/(2022年3月11日)