不思議を科学する

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虹は七色(なないろ)ではない

 雨が上がり晴れると虹が出ることがあります。太陽がやや低い位置にあるときが出やすいようです。条件がいいと虹(主虹)の外側には副虹が現れることがありますが、めったに見ることはできません。現れたとしても色が薄くてぼんやりとしているので見逃すこともあります。

 日本では虹(主虹)の色を外側から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色に分け、それを「七色の」と形容しています。なお、副虹は主虹とは色の順番が逆で一番外側が紫です。虹は太陽の光が空気中の水滴で屈折・反射することで生じますが、副虹は一回多く反射するために色の順序が逆になるのです。

 ところで、いつから虹を七色に分けるようになったのでしょうか。

 アイザック・ニュートン万有引力を発見したり微積分を考え出したりしたことで有名なイギリスの偉大な科学者です。1666年、ケンブリッジ大学を卒業したばかりのニュートンはプリズムを使って光と色の研究を行いました。プリズムは三角柱の形をした透明なガラスです。小穴から太陽光を暗室に導き、プリズムに当てることによって光を虹のように分けました。そしてこれをスペクトルと名付けました。光を虹のように色ごとに分けることを分光と言います。

 ニュートンは分光した光の色に7つの名前をつけました。虹の色をこれほど細かく分けたのはニュートンが初めてのようです。ニュートンがつけた色は、赤、オレンジ、黄、緑、青、藍(インディゴ)、菫(バイオレット)です。日本語ではバイオレットを紫と呼ぶことがあります。紫(パープル)は分光した光にはなく、赤と青(または菫)を混ぜることによって生ずる色です。

 ちなみにJISでは分光した光の色(光源色)を区分しており、赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫です。全部で8色です。

 ニュートンは虹を7つの色に分けましたが、7つの色にはっきりとした境界があるわけではありません。虹の色は赤から菫へ徐々に変化していきます。特に藍や菫の光は弱く、その色がはっきりしません。そのためか、アメリカやイギリスでは虹の色に藍を含めずに、6色としています。さらにドイツではオレンジを除く5色であり、4色以下にしか区別しない国もあります。

 このように虹の色の数は、国によってさまざまなのです。同じ虹を見ているはずなのに、その色や分け方が異なるのは不思議です。

 

参考文献

大山正色彩心理学入門、中公新書(1994)