不思議を科学する

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紅茶にレモンを入れると色が変わるのはなぜ

 ストレート、ミルク、レモン。紅茶はどのようにして飲むのが好きですか。紅茶本来の味が楽しめるということでストレートを好む人も多いようですが、レモンもそれなりに人気があります。

 熱い紅茶に輪切りのレモンを浮かべると、紅茶の色が薄くなっていきます。見た目から味も薄くなったような気がするのですが、飲んでみるとどうもそうではないようです。

 レモンを加えると、レモンの香りとともに滋味成分であるタンニンが出てくることにより、ストレートの紅茶とは別の豊かな味を楽しむことができるそうです。タンニンは、ワインなどにも含まれ、苦味や渋みのもととなっている成分です。

 レモンにより香りや味が変化するだけでなく、色も変わります。紅茶の色は、赤橙色の「テアフラビン」と濃赤色の「テアルビジン」などによるもので、どちらもポリフェノールの一種です。

 レモンの酸味はクエン酸によるもので、pHは約2.2です。pHは数値により、それが酸性やアルカリ性か、またその強さを示すことができます。pH7が中性で、7から数値が小さくなるほど酸性が強くなり、7から大きくなるほどアルカリ性が強くなります。

 紅茶にレモンを加えると、「テアフラビン」が酸により構造が変化し無色になります。これが、紅茶の色が薄くなる原因です。一方、「テアルビジン」は、酸では変化しません。

 井坂氏らの実験によると、紅茶に輪切りのレモンを加えると、紅茶のpHが5.2から3.5に低下することが示されています。そして、pHが低くなるほど色は淡くなり、赤みが薄れ黄色がかってきます。レモンでなくてもグレープフルーツなどの他の酸性のものを加えることで、同じように色は薄くなります。

 また、逆にアルカリ性になると色は濃くなり、濃紅褐色または黒紅褐色になるそうです。酸性やアルカリ性に関係ないのですが、鉄分とタンニンがくっつくと黒くなります。紅茶にハチミツを入れると黒くなるのはそのためです。気のせいですが、色が黒くなると味も香りも濃くなったように感じます。

 紅茶はコーヒーとともに世界の多くの人に親しまれている飲み物です。特に午後のひと時を優雅に過ごすのにはコーヒーより紅茶がぴったりです。ただ、私にはこのような味や色の微妙な変化を楽しむのはなかなか難しそうです。

 

参考文献

井坂正夫、大鹿淳子、紅茶の浸出液に関する研究-第1報 レモン添加時の色等の変化について-、夙川学院短期大学研究紀要(1985)